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  • 執筆者の写真Iori Imai

「凄い」って言えないぞー

更新日:2019年10月12日

映画「調査屋マオさんの恋文」を監督しました今井いおり(41)と申します。

私は普段フリーランスのTVディレクターをやらせてもらっていすが

ライフワークとしてドキュメンタリー映画を制作しています。


「調査屋マオさんの恋文」という映画は、認知症を発症した奥さんを記録し続けている元調査屋の佐藤眞生さんを3年半にわたり撮影したもので、夫婦、認知症、家族について見つめた作品です。


ここでは、 何故認知症を扱った映画を撮ったのか、

また、映画の本編には入りからなかったエピソードを書いていこうと思います。


よかったら予告編を見てください。


佐藤さんとお会いするまでのお話はこちらの記事にあります。


佐藤さんに興味を持った私は、佐藤さんにお会いしました。

そして、それまで書かれた本を10冊程頂くことになりました。

その本は、私にとって佐藤さんを取材するかどうかの判断材料にもなるので丹念に読みました。

(佐藤さんの本)


佐藤さんの書かれた本はとても素晴らしかったのです。

もう、佐藤さんの書かれた事をみんな実行すれば、

みんなハッピーなんじゃないのというぐらいに良い事ばかり書かれていました。

ただ、分かった事がありました。


そして、佐藤さんは非常に語彙に厳しいという事がわかりました。

ある本にはこの様な事が書かれていました。


「さまざまな媒体、いろいろな人間が、いま最も多用していることばに『凄い』というのがある。

ことば本来の意味も知らずに、なんでもかんでも『凄い』を連発する。

それでわかったような気になっている。

『凄い』はニスイに妻と書くから、夫が妻から水を浴びせられるような恐ろしいことというのが元々の意味である。

そいう意味の発話は殆どない。お粗末な思考停止の象徴である。」


簡単に説明すると、凄いという言葉は否定的や悲観的な事を強める時に使われるもので

「凄く楽しい!」「凄く美味しい!」という使い方は間違っている

「凄く恐ろしい」「凄く悲しい」といった場合に使いなさいとおっしゃっているのです。


ドキュメンタリー映画のみならず、本、雑誌、TVなどで取材をする人は取材対象者について調べられるだけ調べます。

それは、取材者が取材対象者に向けて、「貴方に対して興味があります」という意思表示で、取材に入る前の礼儀だと思っています。

そこで、はじめて、事前に調べていたモノ以外の事やその人の本音が引き出せるのだと思っています。


なので、私は佐藤さんとお話する時は、安易に「凄い」という言葉を使っちゃいけないと思いました。


頂いたすべての本を読み終え早速、佐藤さんに感想を伝えようと電話しました。


今井「本、すべて読ませていただきました」


佐藤さん「そうですか ありがとうございます。」


今井「凄く良かったです!」


(しばらく間があり)


佐藤さん「・・・ありがとうございます。」


(やってしまった!)


今井「いや、凄くないです・・・じゃなくて良かったです」


とまぁ、取材者としては最悪のスタートダッシュを切る事になりました。


その後、佐藤さんと再びお話する事になります。


次回「いい質問には答えが入っている」をお送りします。



※「凄い」の使い方ですが辞書で調べると、どちらでも良いそうです。

佐藤さんは当時77歳ですから時代を経て言葉が変化したのかもしれません。

40歳以上だと、「全然」という言葉が変化しているのがわかりますよね。

我々の世代以上は「全然ダメ」というように否定を強める言葉で使っていましたが

現在では「全然大丈夫」は普通に使われますよね。

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